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事例18|青木信用金庫

2025.12.25

事業承継支援の基本は信頼関係
~アドバイザーから学ぶ金融機関としての役割~

事例紹介動画

高齢化進むも経営者が深刻にとらえていない
スタートは「気づき」を引き出すことから

 埼玉県川口市と東京都の一部を営業エリアとする青木信用金庫。名前の由来となっている市内青木地区が創業の地であり、今もここに本店を構えている。そんな青木信用金庫が、中小機構や事業承継・引継ぎ支援センター(以下、センター)のサポートを受けながら、地域の中小企業に対して事業承継支援に取り組んでいる。

 「事業承継については10年ほど前から、中小機構に相談しながら何らかの形で取り組んでいましたが、本格的に動き出したのは5~6年前です。現在は本店内の地域振興部で、中小企業の課題解決や経営支援を行う中で、事業承継は1つの柱になっています」。そう話すのは、青木信用金庫地域振興部経営サポートチーム課長の石山尚さん。石山さんによれば、経営者の高齢化は進んでいるが事業承継について深刻にとらえていない事業者も少なくないという。まずは地域金融機関として、取引先に事業承継の取り組みへの気づきを与えることから始まった。

 大きく動いたのは2020年ころから。コロナショックで地域の企業が厳しい状況に置かれる中、事業承継問題が改めてクローズアップされてきた。危機感を抱いた青木信用金庫は、中小機構やセンターにも加わってもらい、事業承継にかかる本部職員向け案件検討会をスタートさせた。中小機構の富永治アドバイザーの提案で始まったこの案件検討会は、営業店から上がってきたり我々がすでにかかわっているような案件について、情報の共有や今後の方向性などを相談する会議と位置付けている。

石山 尚 さん

石山 尚 さん
青木信用金庫 地域振興部 課長

中小機構の支援
「次のステップ」へ進むための案件検討会
OJTで職員の意識と行動を変える

 「最初は研修の講師として、その後は取引先へも同行訪問しています。そうした中で顧客との信頼関係がうまく構築できていると感じていました」と富永アドバイザーは当時を振り返る。そんな青木信用金庫に対し富永アドバイザーが案件検討会の実施を提案したのは、次のステップへの取り組み強化を狙ってのことだ。「2016年に事業承継ガイドラインが改訂され、多くの金融機関が事業承継支援を始めました。青木信用金庫でも事業承継アンケートを実施していたものの、次の段階へ踏み込めていない感じでした」(富永アドバイザー)。

 案件検討会は当初不定期だったが、今は毎月開催になっている。ここで報告・相談される案件のレベルは様々。あそこの会社は息子が継がないらしいといった入り口の話から、引き継ぎがかなり具体的になっているケースもある。それぞれについてアドバイスをもらいながら、必要に応じて案件先へアドバイザーやセンターの担当者に同行願い、その対応ぶりを職員が学ぶという、いわばOJT的な取り組みだ。「専門家のヒアリングは、職員にとっては大変参考になります。専門的なスキルが必要なケースばかりではないことにも気づける。職員のスキルレベルでもヒアリングして専門家につなぐところまで自分たちでできるようにしたいですね」と石山さん。「私たちの一番の目的は取引先とのリレーション構築です。事業承継で言えば、いつ誰に何をどのように、つまり3W1Hを聞き出すのが基本であり、専門的なスキルが必要なら専門家を頼る、そういう流れが大事だということにあらためて気づけました」(石山さん)。

案件検討会の様子

案件検討回の様子

成果と課題
取引先との信頼関係構築のツールに

 青木信用金庫では、事業承継支援の実行力を上げるため、職員の教育・育成にも力を入れている。今年度の事業承継研修は、中小機構およびセンターの協力を得て事業承継計画の策定をテーマとした。ここでは2回の研修を通じて、自分の取引先で事業承継計画の策定を課題としたところ、すでに策定実績も上がってきている。「専門家に頼らない自走型の事業計画策定が目標のひとつ。少しずつながらできてきましたが、さらに広げていきたいですね」と語る石山さんは、事業承継に対する職員の意識や取り組み姿勢の変化を感じているという。自走のためには相手をよく知る必要があるし、関係性も大事になる。事業承継支援は、取引先との信頼関係構築のツールのひとつになってきている。

アドバイザーの視点

「事業承継支援に取り組む金融機関のサポートといえば、後工程の法律とか税務がメインだと思っていたのですが、実際の相談はもっと手前ですね」(富永アドバイザー)。息子にどう話せばいいか、長男と次男どちらがいいかといった、いわば人生相談のような悩みも多いらしい。むしろ、じっくり話を聞いてそこをほぐしてあげると、案外スムーズに進むケースもあるそうだ。金融機関の事業承継支援では「職員に専門的なスキルや知識がないので難しい」という声も聞かれるが、富永アドバイザーは「もっと楽に行動しては」と助言する。「壁打ちの相手をしてあげる、それで地域金融機関の職員としての役割は十分果たしていると思います」(富永アドバイザー)。

富永 治 さん

富永 治 さん
中小機構 関東本部 中小企業アドバイザー

事例紹介
事業承継の本質は「事業を継続すること」

  杉田製作所は川口市内で店舗内装や什器などの金属加工を手掛ける、いわゆる小さな町工場だ。自ら職人として創業以来この会社を率いてきた杉田政博さんが、事業承継を意識し始めたのは70歳を過ぎたころから。「ある営業店の担当者から“軽いタッチで事業承継の話を振ると急に元気がなくなる社長がいる”という話を聞いたのがきっかけでした」。そう話すのは地域振興部経営サポートチーム課長の八島秀隆さん。その担当者である江戸袋支店係長の仲田真一さんは「後継者をどうするかを決めかねている感じでした。それを後押しするのは自分一人では難しいと思い、本部に相談しました」と振り返る。そこで富永アドバイザーが同行してヒアリングすることになった。

 「訪問して話を聞く中で“事業承継の目的は事業の継続ですよね”と話したところ大きくうなずかれたので、杉田社長なりによく考えて答えを出されたんだと思います」(富永アドバイザー)。「事業承継支援でここまで踏み込んだのは初めて」という仲田さんは、「一緒に進めていくことが大事」と伴走の重要性を感じている。「これまで無我夢中でやってきたので事業承継なんて考えもしなかった。みなさんのおかげで承継問題が解決して、肩の荷が下りた感じです」(杉田さん)。

鏑杉田 政博さん

杉田 政博 さん
有限会社杉田製作所 代表取締役

八島 秀隆さん

八島 秀隆 さん
青木信用金庫 地域振興部 課長

仲田 真一さん

仲田 真一 さん
青木信用金庫 江戸袋支店 係長

青木信用金庫

青木信用金庫
創業:1948年(昭和23)年
所在地:埼玉県川口市中青木2丁目13番21号
店舗数:37店舗
役職員数:507名
預金:7949億円
https://www.shinkin.co.jp/aoshin/

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